:First Mistake:

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「…すごい…」 小川を飛び越えた瞬間、平地は森へと姿を変えた。 アリスはしばらく呆然としていたが、自分がポーンだということを思い出すと、急いで森を走り出した。 そうしてしばらく走っていると、突然森は開け、見事な駅が姿を現した。 ゴシック調のその駅は、森に溶け込むようにひっそりと佇んでいた。 そしてたった今、真っ黒なボディを輝かしながら汽車が駅へと滑り込んだところだ。 「あの汽車に乗れば、三の目まで行けるんだよね?」 ダイナに、というより自分に確認を求めて、アリスは駅へと走り出した。 「乗車券を拝見いたします」 汽車に乗り込もうとするアリスを車掌がそう言って止めた。 「あの…持ってないんですけど…どこにも売り場がありませんし…」 「それじゃ乗れないな」 恐る恐る言うアリスに、車掌はきっぱりと言い放った。 ボォォォーーーー その時ちょうど、汽車が勢いよく蒸気を吹き出した。   「しゅっぱーーーつ!!!」 「「「しゅっぱーーーつ!!!」」」 車掌の叫び声に呼応するように、どこからか大きな合唱が聞こえた。 「えっ…ちょっと待って!!」 呼び止めるアリスの声を気にも留めず、車掌は走り出す汽車に乗り込んで行った。 「もう…どうしたらいいの…?」 走り去った汽車を眺めながら、アリスは途方に暮れていた。 「元気出してよアリス 次の汽車があるはずだよ」 「そうね、そうだよね」 ダイナの言葉にアリスは気を持ち直し、時刻表は無いかと辺りを見回した。 すると、古びたベンチに一人、白い紙の服を着た男の人が座っていた。 「あの、次の汽車が何時来るかご存知ですか?」 アリスは様子を窺いながら、男へと訊ねた。 「それはもちろん昨日さ」 男は顔の高さまで持ち上げて読んでいる紙から顔を離さず、平然と答えた。 「私が知りたいのは、“今日”のことなんですけど」 「汽車は昨日来て、明日出発するのさ。だからこうして一昨日から待ってるのさ」 この人じゃ話にならない、とアリスは思うと大きくため息を吐いた。 「…歩いて行こうか、ダイナ…」
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