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突然響く、優雅な女性の声。
あまりにも唐突な異常に、アリスの涙はピタリと止んだ。
「…だ、誰?」
荒れ果てた部屋。
しん…とした暗闇。
何処からか感じる、誰かの視線。
『どちらを見ていらっしゃるの?ワタクシはこっち』
ゆっくり…ゆっくりと、一つ一つを確かめるように部屋を見渡すと・・・
!!!!!
わかった。
声の主の居場所が。
壁際に置かれた、割れた姿見鏡。
そこに、この状況では絶対にありえない黒い影が映っている。
割れた鏡を凝視するアリスの耳に、女性の声が三度届く。
『やっとわかっていただけたかしら?』
くすっとした笑いと共に、鏡の影が揺れ動く。
本当に、あの鏡から…?
『それにしても、割れてた鏡ほど無残なものはないわ。ワタクシに相応しくない』
その言葉と共に、ゆっくりと鏡が輝きだした。
あまりの眩しさに目を閉じて、開いた時にはすでに鏡は跡形も無く戻っていた。
『これでマトモにお話できますわね。さぁ、こっちにいらして』
アリスは恐怖と好奇心から女性に従い、鏡の前へと立った。
鏡に写っていた黒い影は、よくよく見れば漆黒のドレスを着た美しい女性だった。
彼女は大人しく鏡の前へとやって来たアリスを見て、至極嬉しそうな、それでいてどこか嫌な感じのする微笑を浮かべた。
『ワタクシがお話したいのは、ある“ゲーム”のお話』
「…ゲーム?…」
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