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『ワタクシの主催するゲーム…簡単に言えば“チェス”ですわね。チェスくらいアナタもご存知でしょう?』
こくりと頷くアリスを見て、女性は話を続ける。
『アナタは“駒”になって、チェスに参加して、ワタクシを楽しませる。
そして、ワタクシのチェスをクリア出来れば……
アナタの願いを一つ叶えて差し上げるわ』
「私の願いを、叶えてくれるの?」
『えぇ…クリアすることが出来れば、ね。どうかしら?アナタに損はありませんことよ』
私の願い…
私は、幸せになりたい。
パパとママが仲良しで、ちゃんと私を愛してくれる。
愛情をたっぷりと受けて、痛みも苦しみもしらないような幸せな子になりたい。
でもそれは、ココで泣いているだけでは到底叶わない願い。
それが叶うなら、私は―――
『さぁ…いらっしゃいな』
アリスは女性が鏡から差し出した手を取って、靄のようになった鏡を通り抜けた。
その後をよたよたとダイナが続く。
そして部屋には、静かな夏の夜が訪れた…
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