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俺がおかしくなり始めたのは、高校2年の夏やった。
何がおかしいのか、最初は自分でも分からへんかった。おかしいと最初に気付いたのは、美術の先生。
その当時の授業内容は油絵。
俺は絵を描くのが好きで、美術部にも入ってたから描くのは楽しく、誰よりも早く提出した。
「浅井先生。できました」
「お、弓削。さすがやなぁ……ん?」
浅井先生は俺の作品を凝視した。眉間に皺が寄るほど。
「どないしたんですか?」
「お前……こんな独特な絵、描く奴やったか?」
絵と俺の顔を交互に見る。俺は先生が言う“独特”の意味が分からなかった。
いつも通り、普通に絵を描いていた訳で……先生の言っている様な“独特”とは繋がりはないはずやった。
「配色の仕方が……いつもと違うやないか。肌の色は紫に近いピンクやし、目の色は緑、髪の毛も真緑や」
そんなはずはない……。そう思い、もう一度自分の目で確かめた。
なんや、ほら変わったところなんかない、いつも通り普通の絵やないか。
「先生、こんなんでからかってどうなるんですかぁ」
軽く先生をこずいた。
「お前……おかしいんとちゃうか?」
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