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「夏兄ィ。起きてるぅ?オカンが、朝ごはん食べに来ィて」
開いたドアから、ひとつ下の弟、秋羽(アキハ)がチョコッと顔を出していた。
「あぁ……」
「大丈夫???」
「大丈夫や……」
ゆっくり立ち上がり、リビングへ向かう。
茶色だった階段も、明るい水色だった壁紙も、壁に飾ってある鮮やかな色の花を描いた俺の作品も、全てに色は存在しなかった。
俺は目が回り、倒れそうになる体を壁にもたせかけ支えた。
色がない。
絵の好きな俺にはどうしようもない程の苦痛で。
どんなに美しい絵画や壁画も美しさを失う。
俺の好きな色も、俺は見る事ができない。
一番鮮やかな赤を。もう目にする事が出来ないのだ。
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