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朝ごはんを目の前にして、湧いてこない食欲をかきたてようと必死になってみたが、変化が起きる訳でもなかった。
「お。夏生。やっと出てくる気ィになったんか」
「…………」
俺はオトンを無言で睨んでやった。もう、俺の精神はズタズタで。
「オカン。やっぱ飯いらん……」
「食パン一枚だけでもえぇから、食べなさい。ほら」
こんがり焼けたトーストとバター、そして何かのジャム。
ジャムにはラベルが貼られておらず、色を失った俺には何のジャムなのか分からなかった。
「オカン、これ何のジャム?」
「自分で見たら分かるやろ」
それが普通やんか?と直に言われた感じがしてイラッときた。
「わからへんから聞いてんのや。何?」
「わからへんてどういう事やねんな?それ、ブルーベリーやけど」
「ブルーベリー。俺はベリーがつくもんは嫌いや言うてるやろ……ピーナッツバターは」
「父さんのとこにあるやろ」
だが、オトンの目の前には瓶がいくつか置いてあり、全てにラベルは付いていない。
俺はいい加減苛々してバターとジャムをテーブルに叩きつける様に置いた。
オカンの言葉、ラベルのない瓶の群れ……全てが俺の事を馬鹿にしているように思えた。
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