少女との出会い

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学校の授業をうけているとき、空に浮かぶ大きな雲を見ていると、ふとあの少女のことを思いだした。 あれから、もう一週間が経っていた。 もし、あの子との出会いが運命なら、転校生として、このクラスに来てもいいようなもんなのに。 まぁ、来てないのが、偶然でしかないことの、何よりの証拠なんだけど。 「こら高橋話し聞いてるか」 いつの間にか、考えごとに夢中になっていた俺は、先生に起こられてしまった…。 「好きな人のことでも考えてたのか?」 小学校から、今の高校まで、ずっと同じ学校に通っている、吉田孝が聞いてきた。 もしかしたら、孝のほうが運命の人と言えるのかもしれないな。 俺はそんなくだらないことを考えながら、 「そうなのかな?」 と曖昧に答えた。 正直俺自身よくわかっていなかったから。 今のこの気持ちが、好きと言うものなのか。 「まじでか、俺に相談しろよ」 孝は目を輝かせている。 確かにいい奴なんだけど、俺と孝は違いすぎる。 きっと相談しても、役にはたたないだろう。 それに、正直話すのが、恥ずかしかった。 名前も知らない、一度しか見たことのない女の子のことが気になってるなんて。 「まぁ、どうせ上手くいかないからいいんだ」 「何言ってんだよ、やってみなきゃわかんないだろ。運命は自分で切り開くものなんだから」 孝の言葉が、妙に胸に響いた。 それはきっと、俺は何もしていないからだと思う。 運命かどうか、確かめもせずに、馬鹿らしいの一言で片付けようとしている。 本当は、それが一番馬鹿らしいことなのかもしれない…。 まぁ、だからって人は簡単に変われない。 俺は、孝と別れたあといつものように、家への道を歩いていた。 本当なら、あの少女を必死に探すべきなのかも知れない。 でも、そんなこと、やっぱり俺にはできないんだ。 所詮、俺は物語の主人公にはなれない、脇役でしかないんだから。 そんなことを考えながら、歩いていると、信じられない光景が目に飛び込んできた。 あの少女が、前と同じ場所にいたからだ。 確かに、少女を見た場所は、学校からの帰り道だ。 でも、あれから一度も見たことなんてなかった。 ただ、今大切なのはそんなことじゃない、運命を自らの力で、切り開くかどうかってことだ。
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