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『グラン・マグナム、最終調整完了。目標補足』
無人の部屋の中、機械的な音声がこだまする。
「間もなくだ……」
巨大なモニターを見上げ、噛み締める様に呟く男が一人。
『発射準備完了』
「ようやく、全てを終わらせる時が来た」
画面上には、様々な数式やプログラム言語が流れ、中央のモニターには非常に巨大な塔が映し出されていた。
『充電開始』
「これが、私の出した答えだ」
男はそう呟くと、手に持っていたスイッチを押した。
『カウントダウン開始』
宣告後、大地が激しく鳴動し、巨大な塔から天へと向かう様に光の線が伸びていく。
『60、59、58……』
画面の数字が、無情に終末へのカウントダウンを告げていく。
「…………」
男は、覚悟を決めた様な表情を浮かべ、刻一刻と数字を減らす画面を見つめる。
「42、41、40……」
次第に揺れが大きくなる。
「博士……」
男が呟いた瞬間、ドアの開く音と共に、慌てて駆け込む足音が響いた。
「何をやっているんだ!」
聡明な女の声がこだまする。
女は一瞬で事態を理解すると、怒号と共に男へと詰め寄る。
だが――
「な……!?」
その足は、彼女の周りを取り囲んだ障壁により、それ以上進む事を許されなかった。
『31、30、29……』
画面の数字は、一定の調子で数を減らしていく。
「……何故、来た」
男は、非難ではなく悲観の意が込められた声で告げる。
「今すぐ、それを止めてくれ!それは、貴方の望んだ結末じゃない!!」
「ああ、分かってるさ。だが、もう戻れない……」
女は、必死に叫ぶが、男は意に介す事なく、再び画面の方を向いた。
『12、11、10……』
「……分かるか?結局、人は破壊する事でしか変化を生み出せない。私も、それを変えようと躍起になったが、駄目だった」
「それは……!!」
男の説諭に、女は反論する事が出来ずに黙る。
女は自分の力の無さを悔いる様に、強く唇を噛み締めた。
『6、5、4……』
目前となり、大地の揺れは一層激しさを増す。
「……すまないな」
「……!!」
『2、1……0!!』
女が顔を上げると同時に、一筋の閃光が走る。
その瞬間、爆音と共に、大地が崩落する音が世界中を駆け巡った。
閃光と共に浮かんだ男の顔が、一瞬妖しく月の様な笑みを浮かべた事に、女は気づく事はなかった……。
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