43人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
雨が降っていた。
森の奥深く、誰も立ち寄らないような真っ暗な闇に、車のライトだけが光を放っていた。
「おい、さっさとしねぇか」
川田が森岡に叫ぶ。
「はい、ただいま」
森岡がせっせとシャベルで土を掘っていた。
「ちくしょ。強くなってきちまった」
雨がさっきよりも強くなり、川田の顔に焦りがつのる。二人とも、ずぶ濡れになりながら地面を掘続けた。やっと掘終わると川口が
「よし。さっさとこれを埋めちまおう」
と黒いビニールをもちながら言った。
「はい。ところで誰なんすか?」
と、森岡が川田に聞いた。
「よけいな事は聞くんじゃねぇ」
川田の怒鳴り声が森中に響き渡った。
「は、はい。すいません」
森田は震えながら黒いビニールを穴にいれ、土を被した。川田は、しばらく埋めた穴を見ていた。
「川田さん、そろそろ行きましょう」
森岡に言われ車に乗りその場を後にした。
その時、森岡が見た川田の顔はどこか寂しげだった。
最初のコメントを投稿しよう!