第一章 影を探して

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ある夜の事。ウェンディが寝ている時、家に、一人の男の子が忍び込みました。 男の子は何かを盗むとか、家を荒らすような事はせず、ウェンディの寝顔を見て、弟達の寝顔を見ようとウェンディの部屋を出ました。 その時、犬が気付いたのか走ってきました。 『わおーん!!』 『?!』 犬の突撃をひらりとかわすと、男の子は逃げていきました。 男の子は知りませんでしたが、実は弟達の寝顔を見る為、部屋を出るとき、すでにウェンディに見つかっていたのです。 犬は戻ってくると、何かくわえていました。 それは、男の子の影でした。 『まぁ、ナナ。それはどうしたの?』 窓を閉めた時にちょうど良く、男の子の影が挟まり、その時、男の子からちぎれていったのを、犬が持ってきたのです。 『お父さんとお母さんには内緒よ?この影は私が預かってるわ!』 ウェンディがそう言うと、犬は影をウェンディに渡した。 ウェンディはその影をタンスにしまいました。 『今度来たら返してあげなくちゃ!』 そして、一週間が過ぎました。 その日、ウェンディは寝たふりをして、見ている事にしました。 案の定、男の子はやってきました。 キョロキョロと辺りを見回す男の子に、ウェンディは言いました。 『あなた、自分の影を探しているんでしょう?』 男の子は、一瞬ビクッとし、観念したように言いました。 『そうなんだ。この間、遊びに来た時に落としちゃったみたいで…』 男の子は悲しそうに言いました。 『大丈夫よ!私が預かってるわ!はい、これ。』 ウェンディは影法師を渡すと、男の子はパッと笑顔になりました。とても八重歯が特徴的な男の子でした。…(^ω^)♪ 『ありがとう!良かったあ。無くしたらどうしようかと思ったんだ。』 『あなた、名前は?私はウェンディっていうの。』 『僕?僕はピーターパンさ!………あれ?どうしよ。くっつかない…』 ピーターパンは、自分に影がくっつかなくて焦っていました。それもそのはず、ピーターパンは何を思ったのか、石鹸でくっつけようとしていたのです。 『石鹸でくっつくはずないじゃない!これは縫いつけなきゃダメね。』 ウェンディは針と糸を取り出しました。 『痛いかもしれないわよ?』 『泣きゃあしないさ!』 そしてウェンディは、ピーターパンに影を縫い付けてあげました。
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