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『ついて来るか?』と言う春海の問いで車に乗り込んだ俺達が向かったのは
ある施設だった。
『此処が俺の仕事場』
着いた先は....病院..か?
病院ほどの大きな建物ではないが
白く、木々に覆われていた。
建物へ入る途中、春海が
『今まで聞いて来ないから喋る事も無かったけど、エンバーミングって知ってるか?それが俺の仕事..所謂、エンバーマーなんだ』
言った。
『エンバーミングって?』
と問うと
『死後処置。遺体も着いたみたいだな、お前は別室な、』
と言われ別室に放置された。
....見せてくれるんじゃないのかよ。
あの親子の遺体....酷い状態だったな....あんな...あんな姿...
あれじゃ遺族も救われないだろうな...
ガチャッ
っと扉が開き
長い髪を1つに纏め、白衣に身を包んだ明るい表情で気さくな感じの女の人が入ってきた。
『こんにちは、あなたが春海のルームメイトね?えっと、名前は...欒くんでいいかしら?』
と聞かれたので
『...はい。』
と、気まず返した。
『あははっ、そんな堅くならないでね?春海から相手を任されたのよ、私は処置には加わっていないからね、あぁ私の事は明日菜-アスナ-って呼んで、』
.....堅物のると快く話てくれた。
明日菜『エンバーミングは、死後処置の事でね、遺体に防腐処理や修復処理をして死後以前の状態に戻す作業なのよ、事故死の場合や闘病生活が長く痩せてしまった場合でも、まるで健康な状態で寝ているような状態に仕上げるの。時間を少し戻す魔法ね』
と答えてくれた。
欒『...だから、春海は遺族の人に時間を戻すって言ったんだ....』
漸く少し理解する事が出来た。
明日菜は、欒の前にコーヒーを置いて
煙草を取り出し火を付け
話を続けた。
明日菜『エンバーミングはね、生きてる人の為のものなのよ。どんな状態であっても、体内を殺菌し公衆衛生上安全な状態にするとともに腐敗を止めて修復する事により、遺族の悲しみを和らげ遺体とのゆとり有る別れを実現させる事が出来るのよ。
処置が終わった後の安らかな顔を見た遺族の安心した顔は、私達にとってもホッとするものよ...
今回運ばれた遺体は2人だから、修復には...7時間て所かしら』
欒『7時間?!』
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