EMBALMING...7

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そう...五時間延々と話を聞かされる事に成った。 時々コーヒーを口に含んだり 足を組み替えたり 初めは退屈で仕方なかったのに 洗脳か? 次第に引き込まれてゆく自分がいた。 まずはエンバーミングの起源、行う為の義務、現在の発展率について聞かされた。 エンバーミングは古代エジプトのミイラ作りに起源を持つ遺体の防腐処置でり また、エンバーミングの普及は19世紀後半のアメリカにおける 南北戦争が契機と成った。 戦死者を遺体のまま故郷に移送する必要があったからである また暗殺されたリンカーン大統領にも エンバーミングが施され その効果を人々が目にした事から北米で急速に普及し 現在では北米の9割の遺体にエンバーミングが施され 北欧、英国でも7割に施され 国際的に一般的な処置となっている。 海外へ遺体を移送する際にも 原則としてエンバーミングが必要。 死後数時間は体内で菌は生きている為 中には生きている者に害を及ぼすものを含め 公衆衛生上安全な状態を保つ必要があるのだ。 これも、生きている人間の為に... 廃液処理においても環境基準を厳守し 地方自治体の環境課への届出義務がある。 日本ではIFSA(日本遺体衛生保全協会) が自主基準を作成しており エンバーミング施設を厚生労働省や環境省へ届け出て行う事を取り決めている。 刑法190条の遺体損壊罪を阻却するためである。 日本での本格的なエンバーミングは1988年に開始され2002年には12204体に施され年々増加にある。 コーヒーを一口含んだ。 自分自身まんざら興味が無い訳じゃないみたいだから おとなしく聞いていた。 彼女は見抜いているのだろう。 俺の興味を引っ張り込んでいる。 ....仕方ないから付き合ってやるさ。
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