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扉を開けると
以前交わした莉砂と私がいた。
紀砂『莉砂がいなきゃ...ダメだよ...私一人じゃ何も出来ない』
莉砂『紀砂、もっと自信を持ってよ。私だって一緒だけど、私なら紀砂と一緒なら何だって出来ちゃうって考えるよ。だから...ね?頑張ってみようよ』
『ずっと一緒だよ』
そう言って笑った莉砂がいた。
紀砂『莉砂...ねぇ...一人にしないでよ...お願い...嫌だよ....約束..したじゃない...』
扉の前で泣き崩れ紀砂は一歩も動けないまま一夜を明かした。
翌朝、目が覚めて泣きはらした顔で一階へ降りると
公園で見かけた男がいた。莉砂が連れてきたの?
そして、莉砂も帰って来ていた。
正直、怖い。
見たくない。
だって莉砂の死に顔なんて...
莉砂が死んだなんて...
昨日は一緒に学校へも行ったんだよ?
なのに今日は...
心臓の音がシールドを伝い全身から鳴っているように響く。
お母さんは
『お帰りなさい、莉砂...私の可愛い駒鳥...』
と棺桶の莉砂に触れていた。
『とっても綺麗よ...紀砂とコンサートの為に選んだ衣装だものね』
と話ていた。
゛私と選んだ...゛
ゆっくり棺桶に近づくと
馴染みのある自分とそっくりな莉砂が
頬を薄紅に染めて
まるで天使か妖精、いや、森で遊び疲れた駒鳥のように柔らかく微笑みながら眠っていた。
軽やかな聖なる奏者の手は真っ白で
凄く綺麗だった。
『紀砂、ほら笑って』
そうやって笑う莉砂の声がした気がした。
紀砂『おかえり...お帰りなさい...莉砂。』
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