EMBALMING...3

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17に成って施設を出た俺を引き取ってくれたのは兄貴と慕う春海だった。 『欒ってさぁ、団欒の欒て書いてマドカなんだな。』 春海の部屋に着いての一声はそれから始まった。 『うるせぇよ...』 とバツが悪そうに答えると春海が笑った。 忌々しい名前付けやがって... 団欒なんて場所に居た事も無いのに。 部屋は白く意外とシンプルに纏まり広かったが、部屋に入る前すれ違った近所の人達の蔑む目が気になった。 『此処に住む以上、話しておくけど、近所の目は あまり良いものじゃ無いけど気にしないでいいから。』 と春海が話した。 『そぅ....』 別に理由を話したくなきゃ聞かない。 それから一週間が経っても春海は仕事をしている様子が無く、いつも家に居た。 俺は学校とバイトに明け暮れて帰りは夜中だった。 バイトから帰ると春海と夕食を取り 毎日遅くまで話ていた。 馬鹿な話が無償に楽しくて。 学校に行く時に見かける近所の人達は相変わらずで 腹がたつので たまに睨みを返してやった。 近所のガキ共も同じだった。 俺達が孤児だからか...春海が一体何をしたのか知らないが 春海の敵なら容赦なく悪びれてやった。 あぁあ...俺って可愛い...。 なんて、今ある生活が気に入ってて それを非難されるのが悔しかった。 それから5日後、夜中に電話が鳴り春海が 『仕事に行ってくるから、寝てていいよ』 と出ていった。 次の日が日曜で学校は休みだったので、部屋でslip knotを大音量で聴いてやったり、本を読んだりしていた。 春海が帰って来たのは午後だった。 帰って来た春海は黒服で、それからまた何もなかった様にまた家にばかり居た。 出掛けても図書館や本屋、散歩だったり何気なく過ごしていた。 春海が『仕事』と称して出掛けるのは週に二回だったり 二週間に一回だったり区々で電話が来るのも昼夜24時間問わず。 帰りすらもわからない状態だった。 別に、仕事をしてない訳じゃないならいいけど...。
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