キスをひとつ。砂糖をふたつ。

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「だから、ね?」 「そんなことない!」 「…はぁ」 コーヒーは砂糖を入れない方が美味しい、と言う僕に君は食ってかかる。 甘いのが好きなのは、やはり女の子、だからだろうか。 だとしたら、この口調はなんなのだろう。 なら、一回ブラックを飲んでみたら?と言ったら以外にも、素直に頷いた。 コップに口を当てる仕種さえ愛おしいと思ってしまう。 僕はそれだけ君に惹かれていた。 黒く苦い、君が嫌いな味の液体が喉を動かすその様を目で追う。 文として表せれない。言葉に出来ない。 説明なんて、できやしない。 理屈じゃないんだ。この感情わ。 君のその存在全てが愛おしく、自然と目を細める。 と、同時、だろうか。 「ぬぁっ…っ…にがっまずっ」 …全てが愛おし、く……。 「…。はぁ…」 「まっずいじゃん!やっぱ甘い方が美味しいよ!味覚、狂ってんじゃない?!」 そう言って君は角砂糖をふたつ、コーヒーの中に落としてから一気に飲み干す。 僕にいわせれば君の方が狂ってる。 だけど、その思いは胸の内に。 きっと口にすれば君は怒った顔をするでしょ? それはそれで見てみたいけど、今は 「……っ///」 軽く唇を宛がえば、君は驚いた顔。 目を猫のように大きく開き、耳まで真っ赤。 君はやっぱり愛おしい。 「…甘い…」 「…っお前は苦いよ!」 苦いのは嫌い!! そう言って僕に背を向け疾風の如く部屋を出ていく。 怒った? まさか。 あんなに赤くなって。 「嫌い、か…」 それは困るな。僕は君が大好きだから。 机の上に置かれたコップに注がれているコーヒーに君と同じ、角砂糖をふたつ、沈めて。 喉を通すとやっぱり、胸やけ。 いつから甘いものが嫌いになったんだろぅ…。 まぁ、いいか。 甘いのは君の唇だけで、充分です。
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