687人が本棚に入れています
本棚に追加
『いってきます』
あたしは靴をはいて玄関を出ようとしたら、母さんに引き止められた。
『ちょっと!待ちなさいよ、弁当』
右手に持ってた弁当を『あ、あぶねっ』苦笑いで受け取り、外に出た。
『いってらっしゃい』
『何か林檎、元気になったな』
あたしがいなくなってから、母さんの後ろから父さんが出てきて呟く。母さんは笑顔で頷いた。
『とりあえず良かった感じがする』
『まあな。お前にそっくりで行動に出やすいんだからよー、すぐ分かるっての』
そう言うと、母さんは顔を真っ赤にして
『そ、そんなことないっ』
父さんはそれを見て、意味深にニヤけた。
弁当を家の前で鞄にしまっていると、自転車の音が近付いてきて止まった。
『おはよ、林檎』
目を擦り、ボサボサの髪の毛を少しいじりながら翔斗が言った。
『お、おはよう。』
あたしはその様子をちょっと笑いながら返す。
鞄に弁当を入れ終えて歩き出すと、翔斗も一緒に歩き出した。
『ちょっと!ついてくるの?』
『あー?そうだけど。駄目?』
あたしは顔をしかめ、翔斗を睨み再び前を見た。
『別に。いいよ』
終。
最初のコメントを投稿しよう!