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「………うぜぇ……」
かすれて情けない声になってしまった。喉がからからに渇いている。その上、頭が痛い。閉じた目をもう一度ぎゅうとつむった。
「おいおいちょっと大丈夫? なにアンタ行き倒れ?」
妙な口調で、喋りかけられた。外国人の訛りというわけではなくて、若者のそれというか――……とにかく俺は嫌悪した。
「ちょっと、黙れ……」
頭痛のこともあって、相手の声が耳障りでならなかった。苛々と不機嫌に顔を歪ませ視界を開いた。
「…………」
おかしなものを見た。黄色の物体がこちらをいぶかしげに眺めている。俺はこいつを見たことがある。
確か、赤い帽子をかぶった少年が、いつも肩に乗せている、黄色いうさぎだ。俺は驚いて、飛び退いた。ぐっと両足で地面を掴んで、立ち上がって、
「っ、うお!」
立ち上がった筈なのに、俺は見えない何かに背中を押されたように、腹から落ちた。
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