片恋

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さっきからずっと一通のメールとにらめっこ。 あんまり見てるもんだから、目が疲れてきた。 【ごめんね。私ユキの好きな人に告白された。それオッケーしようと思うの。本当にごめん】 あーあ、と目を覆いたくなる現実。痛いくらいに突き刺さる。 メールを消してしまおうかと思った。けど返した返事は 【私、あの人もう好きじゃないよ。良かったね。応援してるから】 嘘っぱちな言葉ばかりだ。でもこれしか思い浮かばない。 まさか、「とらないで」なんて言えない。 自分の男じゃあるまいし、何より彼が選んだのは私じゃなく、私の親友。 隣にいるべきは私じゃない。 わかってる、わかってる。 そう言い聞かせて打った返事だった。 【なら良かったよー。ありがと、ユキ】 唯一私が怒るかどうかが心配だったのだろう。 私の返事にものすごい安堵感を得たみたい。 そこで私は携帯を閉じた。 込み上げる切なさに胸が痛む。 「ピンチはチャンスって誰が言ったんだ、ほんと…」 まぁ…この場合はチャンスはピンチだったけど。 やっと彼が彼女と別れた。 すごい嬉しかった。 彼女サンには悪いけど。 明日にでも遊びに誘おうと思った。 その矢先でのこの出来事。 びっくりってなもんじゃない。まさかの大逆転。 突然過ぎて涙も出りゃしない。まったく。 「…私の気持ちはどーしたらいいんだよ…」 本当、分からない。 見えないんだ、この先が。 出口のない迷路みたいにグニャグニャした私の気持ちが迷走する。 親友へと 大好きだった人へと そして自分へと グルグル回ってしまいにゃ、頭がパンクしそう。 人間、一気にショックは受け止められないようになってるもんだ。 閉じた携帯をまた開く。 【私さぁ…あなた達二人を見たくないよ。当たり前でしょ?そんな事急に言われて…親友ならもっと違う道もあったんじゃないの?!あんたサイテーだよ】 ただの八つ当たりだってのはわかる。矛盾だらけって事もわかる。けど打つ手が止まらない。 画面に水滴が落ちた。 それが涙だと気付くのは、送信ボタンを押してからだった。
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