最期の煙

4/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「あの、すみません」 黒い中に場違いな白い服で私は入った。 不思議そうに私の顔を見る。明らか私は不審者だ。 「あなた達の話が聞こえて…」 「あっ、そうでしたか…!」 「とても素敵な人だったんですね、御主人。」 「えっ……?」 「伝わります。見なくとも。それほど大きな人だったんですね」 ガタンカダンと大きな音。私の待つバスが見えてきた。 「あ、あの」 「出しゃばった真似をすみませんでした。ご冥福をお祈ります」 「……ありがとうございます。後で主人に伝えます」 深く深く頭を下げた。 こんな私に向かって。 涙が地面に落ちるのが見えた。 その時ビーと、バス独特のドアの開く音がした。 私は少し段差のある階段を上りながら 「お礼を言うのは私の方です。ありがとうございます」 そう言った。 まだ何か彼女は聞きたそうだったけど、ちょうどドアが閉まってしまい、何を言おうとしたのかは、わからなかった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!