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「あの、すみません」
黒い中に場違いな白い服で私は入った。
不思議そうに私の顔を見る。明らか私は不審者だ。
「あなた達の話が聞こえて…」
「あっ、そうでしたか…!」
「とても素敵な人だったんですね、御主人。」
「えっ……?」
「伝わります。見なくとも。それほど大きな人だったんですね」
ガタンカダンと大きな音。私の待つバスが見えてきた。
「あ、あの」
「出しゃばった真似をすみませんでした。ご冥福をお祈ります」
「……ありがとうございます。後で主人に伝えます」
深く深く頭を下げた。
こんな私に向かって。
涙が地面に落ちるのが見えた。
その時ビーと、バス独特のドアの開く音がした。
私は少し段差のある階段を上りながら
「お礼を言うのは私の方です。ありがとうございます」
そう言った。
まだ何か彼女は聞きたそうだったけど、ちょうどドアが閉まってしまい、何を言おうとしたのかは、わからなかった。
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