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ふわふわ真っ白なウサギが、何食わぬ顔と、落ち着いた足取りで、通り過ぎていく。
「べ、弁当盗難ウサギ!」
「因幡さん!」
キティのが、少し遅れて言った。こいつが因幡さん、おのれ元凶がなければあたしは鎌倉で昼食タイム……。
「あー!」
因幡さんの口元に、ソースがついている。あれはきっと弁当の中のカニクリームコロッケのソース!
「食ったのか、食ったんだな!?」
因幡さんは無言無視。あたしなんていないみたいな扱い。
「ウサギはウサギらしく、にんじんを食え!」
あたしが叫んで驚いたのか、因幡さんは突然、前方に駆け出してしまった。
「追うぞ」
咄嗟にキティに言われ、因幡さんを追い掛ける、つもりが転ける。
だって、突然だったから、足がもつれて砂に持っていかれたんだ!口の中やだ、ちょっと、砂、食べたぞ。
「生きてるか?死んでるなら返事をしろ」
「死んだの前提に話しかけるな!」
キティは、生きてたか、と面白くなさそうに言う。その間に制服についた砂をはらう。余計な労働。
「これにつまづいたのか」
キティが砂に埋もれかけたなにかを蹴飛ばした。拾い上げると、金色の懐中時計が出てきた。
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