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ドアをいじってみるが、開かない。押しても引いても反応ナシ。まさか、下から引き上げるのか?
チャレンジ。
はい、無理でした。
鍵は持っていない。しょんぼりだ。悲しくなっても相談できる相手すらいない。がっかりで、視線が下に下がる。
そのおかげで、あたしは新たにドアを発見した。しかし、小さい。ドールハウスよりやや大きいくらいだ。隣にある、普通サイズドアと比べると、おもちゃみたいだ。小さいくせに、かなり精巧にできている。親指姫が出てきそう。
さあ、開くか。しゃがんでドアに触る。小さすぎて、ドアノブが掴めない。そう、そのドアは小さな反逆者だったのです。
念の為また辺りを見渡してみるがキティはいない。お家帰りたぁい!
「キティめ。見つけたらラリアット!」
変な決意をした後、他を探すことに。内心、やや焦りだ。あたしがベンチから離れて確実に10分以上は経過している。優子が腹痛でトイレにこもっていたとしても、帰ってきているはずだ。そうなると、あたしがいなくて行く行くは大問題になるのです、たはー。
こんなところでキティとかくれんぼしているくらいなら、お勉強をしたい。そして、郊外学習前の中間テストをやり直したい。
立ち上がって、テーブルの上を見る。興味本位でビスケットウォーマーを開けて、閉める。動かなければクレヨンみたいで可愛いのに。
キティが消えたのは明らかにコレのせい、分かってる。しかし、あたしだけじゃ現状良くも悪くもならない。時間だけが過ぎてしまう。
困り果てた。お腹が空いた。愚痴ばかりが出てくる。
「キティー」
「アリス」
思わず呼んだ名前で、応答があった。声は聞こえるけれど姿が見えない。
「ここだ」
「どこだ」
右見て、左見て、後ろを見ても人影なし。声だけが聞こえる。透明人間を相手にしているみたいだ。
「左、そう、そのまま」
左に顔を向けて、固定するように言われた。キティの声だ。固定した視界の中でキティを探すと、
「キティさん!?」
すごく小さいキティが見つかった。嘘だ、なんでこいつ小さくなってるんだ!
「馬鹿、近づくな。あんたスカートだろ」
「あ、ああ」
変に気を使われて、こっちが恥ずかしい。
「そんなに小さいんじゃ、ラリアットは無理か」
「は?」
「なんで小さいんだよ!」
小さくなっても可愛くない。
「あんたのせいだ。クッキーを食べたから小さくなった」
「クッキーで?冗談は止せやい」
「冗談じゃないから、俺はこんなに小さくなってるんだぞ」
「あっそ、ごめんね。それで何味だった?」
「……チェリー・タルトとカスタードとパイナップルと、ロースト・ターキーとタフィーと焼きたてのバター・トーストをいっしょくたにしたような味」
長すぎて聞き取れない。日本人だから、タフィーが分からない。パイナップルとバタートーストとか、食べ合わせ悪そう。
「小さくなる成分を知っていた上で、食べさせようとしたのか」
「そうだ」
捕まえてきつく手で握れば潰れてしまいそうな大きさのキティ。状況を理解していないのか、口のきき方を気を付けない。
「その結果がこれだ、ざまあみろだぜ。さ、早く出口に案内しろ。でないと、踏み潰すぞ」
「そうか。で、小さくなってもらおうと思ったのには、それなりの理由がある」
勝手に話が進む。冗談だと思われている。
「回りくどい説明はいいから、本気だからな、本気で潰すぞ」
「はいはい、あそこにドアがあるだろ?あれを通ってもらいたかったんだよ」
キティは2つあるドアのうち、小さな方を言っているのだ。そうね、小さくなれば通れるわねって、悪夢!どこからが夢だ?ウサギを追い掛け始めてから、すっかりあたしの世界観がぶち壊しだ。
服着たウサギ、変な地下、小さくなるクッキーに、目の前の馬鹿。普通の鎌倉観光じゃあ、見れないぞ。
「大きいドアじゃだめなの?」
「鍵がかかっているからな。俺が反対側に行ってドアを開けるか、あんたもクッキーを食べるかだ。中々、美味いよ」
「小さくなるのは嫌」
危険な物は食べない。
知らない土地で食べたものは体調を壊す元になる。ましてや、体が小さくなるなんて、問題外だ。
「すぐ開けるから、勝手に動くなよ」
彼がドアノブまで届くのか疑問だが、頑張って開けてくれるらしい。健気なことだ、さっさと開けて欲しい。
やっと出られる。早く日の光がみたい。
キティがドアの奥に消えていく。あたしが中を見ようとすると、向こう側からさっとドアを閉められた。行儀がいいことで。
大きいドアに耳をそばだてて、あっち側の様子を探る。音がする。打ち付けるような音だ。なんだか、聞いたことある。
「まだー?」
軽くノック、返事なし。
コンコン。
コンコン。
コンコンコンコンコン。
ココココココココココ――ゴンッ!
連続でノック、いや、ドアを殴っていたらあちら側からも殴る音がした。いい加減にしろコールだろう。気に食わない彼をイラつかせるためにやっているから、大成功だ。
それからしばらくしてノックが返ってきた。で、このドアは押しドア。間違えないぞ。
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