第三章

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  「では、パインケーキを切り分けよう。アリスの分はやや大きめに!!」 「アリス万歳!!」  聖歌だったら食べられなかったのかな。だとしたら、アリスも悪くないね。 「切り分けました!」  パインケーキなんてどこにあったんだ。いやいや、気にしないでおこう。あたしのために食べさせてくれるのだから! 「どうぞアリス。ついでにキティ」  アヒルが上手に羽根の先に皿を乗せ、あたしに渡してくれた。 「このシロップをかけるとより一層美味しくなりますよ、ひっひー!」  ワシの子がかけるシロップはとろーりとしていてめちゃめちゃ美味そう。 「俺、いらない」 「食べないの?」 「あんたも、食うな」  キティは皿を受け取らない上に、あたしに食べるなと言ってきた。ワシの子とキティの間には見えない火花が散っている。 「キティは食べなくてもいい。だが、アリスの邪魔をするのは許さない!」 「うるさい、死ね」 「ちょっと、キティさん」  非常識だ。あっちは好意でやってくれているのに。気にくわないからって、そりゃないだろ。 「どうしたの?喧嘩は駄目だよ」 「でも隊長、キティが!」  ワシの子が文句を言おうとドードーに向かって喚いたが、ドードーがなだめる。 「キティにはキティなりの考えがあるのだろうよ。だが、肝心なのはアリスの気持ちだ!我々は食べて欲しいが、アリスが食べたくないというのなら仕方がない!!涙を飲んで諦めよう!」  断りづらい。   「や、でも、美味しそうだし……」  ケーキを食べたからって死なない。そう思っていたのだが、あたしは忘れていた。 「さっき小さくなるクッキーを見て、今、大きくなるソースを見た。それでも食うか?」  キティと会ってから、マトモな食べ物を見てないのだ。このケーキも例外ではないかもしれない。 「デマだ!証拠はあるのか!!」  批判されて、沸点低すぎのカササギは言った。もしカササギの言う通りに、好意で出されたものなら、怒るのも無理はないのだが、 「じゃあお前、食えよ」 キティが言うと、カササギは声を飲み込むように黙り込んでしまった。 「なに……」  どうなってんだ。  黙り込まなきゃいけないようなものを、喰わせようとしたのか? 「ドードー」 「なんだいアリス」 「このケーキ、なに?」 「パインケーキさ!とっても美味しいから是非食べてくれたまえ。ほらほら、冷めてしまうよー」  ドードーにおかしな様子はない。しかし、何故急かす? 「なにが入ってる?」 「だから、パインだよアリス。細かい材料までは覚えてない。さぁさ、いい食べっぷりを見せてくれ!」 「食べなきゃだめ?」 「無理強いはしない。アリスに任せるよ」  と言いつつも、食べろと言われたようなものだ。皿を無理矢理押しつけられて、フォークを握らされた。 「話にならないな」  キティは皿のケーキを素手で掴み、 「どうなるか見てろ」 口に入れてしまった。
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