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波の音だった。強く打ち付ける波の音。江ノ島へ続く橋でも聞いた。
辺りは浜と海が延々と続いていて、それ以外には何も見当たらない。なにも……。
「どこだよぉぉ!」
「海」
「ああ、そうだね。ここはどこだよぉお!!」
「だから、海」
鎌倉の、どこだよ。同じ海だが、建物がない、人もいない。ぐるりと1回転したが、なにも。これほどなにもない海が、鎌倉内にあるのだろうか。いい観光スポットになりそうなのに、あたしとキティだけ。
他にあるのはドア2つ。普通は壁やに物にくっついているはずなのに、自立している。このドアはどうなっているんだ?
さっきまでいた場所から繋がるなんて、地下にいたはずなのに。
小さなドアには、小さなキティが寄り掛かっている。
「その大きさ、いつ戻るの?」
「効果が切れる食べ物がないと、どうにも」
「は、何だって?」
なにその危ない食べ物!初対面のあたしになにやっちゃってくれようとしてるんだ。
「じゃあ、食べ物がなければずっとそのまま?」
「ああ」
もっと、焦れよ!!常識の範囲外だ。顔色変えずに受け答えするとは、鈍いんだか図太いんだか。
「このまま先に進めば元に戻る」
「なに、ついてくる気?」
「俺がいなくて、道分かるのかよ」
「……ああもう」
なんとも頼りないやつだが、帰り道は分からない。キティは知っているような言い草だし、頼るしかないだろう。
「どうなってんだよ」
当て付けにドアを蹴る。
ドアが開く。
ウサギが見えた。
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