第三章

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 それから。 「これってちゃんと進んでる?」  ずいぶん経った気がするが、景色が変わる気配が、ない。海だ、浜だ。 「当たり前」  キティは頼りにならないし、先がとても苦しくなってきた。 「お腹空いたなぁ」  さっきから歩きっぱなしで休んでないから、余計にランチタイムが恋しい。 「だからクッキーを食べておけばよかったんだよ」 「嫌だ。貝やら魚を焼いて食べたい」  江ノ島でやたらに見たんだ。いか焼きとか、しらす丼とか、美味しそうだった。 「もー、疲れた!」  あたしはその場に座り込む。動きたくない。足が砂にとられて歩きにくいんだよ、海のバカヤロー。 「アリス」 「おかけになった電話番号は、現在、使われておりません」 「変な対応で返すな」 「あたしはもう人として機能していないんだよ、現在、使われておりませんなんだよ。このままここでくたばりそうな勢いだ、あー、死ぬ死ぬ」  腹が減りすぎて話すのも嫌になってきた。 「なら、あそこに見えるのものが食べ物だったら、俺だけで食べるから」
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