第三章

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  「食べ物!?」  慌てて目線をやると、なにかが砂を引っ掻いて動ついている。貝、いやカニか!? 「見てくる」 「いや、キティが行くんじゃ時間かかる。あたしが行く」 「ここでゆっくりしてろ」 「指図、嫌い」  砂っぽいローファーで走った。ほとんど感覚はなかったが、キティがあたしの人差し指を掴んだ。 「いきなり動くな!落ちる」 「何時何処でどんな危険が起こるか分からないこの世の中で何を言う」 「熱弁中に水をさして悪いんだが、目標物を通り過ぎた」 「何だと!?」  早く言って欲しい。踏み止まった砂の上、砂の靴下が気持ち悪いや。  数歩戻る。 「ここかな」  砂が動いている。小さな歪みができている。なにかがいるのは間違いない。 「引っ張りあげてみろよ」  キティがあたしを促す。あたしはスカートに砂がつかないように手で押さえながらしゃがむ。これでも一応、女子だから。 「予想、カニ」 「あっそ」  構ってくれない。  ストレス、文句より空腹のが上回ってるから、腕を伸ばし砂の上に軽く手を置く。この感覚は懐かしい。砂なんて公園の砂場で触れたのが最後だ。  泥だんご作ったなぁ……実に無意味だったなあ。山作ってトンネル開けて、トンネルにはミニカー一台も通さなかったよなあ。  と、どうでもいい回想。  砂のなかにグレーが見えた。触れてみると、表面はふわふわ。 「カニや貝の触り心地は、ふわふわだと思う?」 「そんなやつがいたら是非お目にかかりたいね」  違うのね。クッキーは動いたくせに。埋もれたのなにかの周りの砂を軽く掘り、一気に引っ張り上げた。
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