第一章

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 他愛もない話で盛り上がる。一番気になるのは、校外学習前に済ませてきたテストだ。校外学習が終われば、学校でテスト返却がある。いっそこのまま、永遠に校外学習でもいい。数学が壊滅的だ。 「うちの制服じゃない?」  展望台から降りたあとで、急な坂道の石段の上、優子が指差す先には見慣れた色の制服の男子達。深い緑のブレザー、他校からのウケが悪い。通っているあたし達自身もこの制服はなんとかならないのかと、日々愚痴っている。 「本当だ」 「四ッ谷くんがいるよ!」  全員がうちのクラスの男子だ。班の前の方にいる四ッ谷くんは、こちらに気付いていない。 「行ってみようか」  にこにこしながら優子が先に小走りに。それにつられて、足取りが軽く、早くなる。会いたい気持ちがあたし達を引き寄せてるんだ。貴方があたしに気付いた瞬間、きつく抱き締めてくれればもうなにもいらない……わけがない。恋愛小説を目指してみたが、気持ちが悪くなった。 「おーい」  優子が男子達に声をかける。あらやだ、積極性がある子。 「おお、綾瀬さん達も岩屋?」  四ッ谷違う!  そこは、綾瀬さんじゃなくて“周防”さん!!優子が声をかけたから仕方ないかもしれないが、乙女心は複雑なものでしてね。 「うん。でもその前にお弁当にしようと思ってたの」  優子が言うお弁当とは、学校側から配布されたやつ。配られたときに、透明な蓋から、美味しそうなおかずが見えていたから楽しみにしている。 「そっか。俺らはこれから展望台に行くとこ」 「岩屋は?」  空気になる前に会話に無理矢理加わる。四ッ谷くんはぽかんとした表情で言った。 「もう行ってきた」  おおっと。入れ違い、すれ違いじゃないか。してやられた。 「岩屋って言っても、なんもないよ、ただの穴。入場料取られるから無理して行かないほうがいい」  四ッ谷くんはそう忠告してくれた。あたしも岩屋自体にそれほど興味はないが、 「でも、せっかくの鎌倉だから」  優子がノリノリである。これは行くしかない。
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