第一章

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 真直ぐ、止まらずに。すうと、微かな風に手が触れた。入り口から吹いている。ぽっかり開いた入り口兼出口は、光が差してそこだけやけに明るい。  最後の一歩を踏み出す。と、地面が窪んでいるのか、地に足が触れない。普段通りに重心をかけにかかると、あたしの片足はやけに下まで落ちていく。 「ひっ」  そこは穴が開いていた、下に。ものの数秒で穴に落ち、出口の光は消えてしまった。観光地に落とし穴があっていいのか?  とりあえず叫ぶことしかできない。いまだに落ち続けているんだ。そこらへんのジェットコースターを余裕で越す勢いで、重力と怖さが組合わせてあたしにのしかかる。無理!  あたしは弁当を諦めて、平和的に退場するつもりだったのに。辺りは真っ暗で、目を閉じているのか、開いているのか、意識があるのか、ないのか、段々と分からなくなった。
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