第二章

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  「ええと」  言葉を探る。 「あたしは落ちたんですよね。助けてくださって、ありがとうございます。ここから出口って、どうやったら行けますかね?」  立ち上がって出口を探そうとする。と、男があたしの腕を引っ張た。実に分かりやすいスッキリとした音を立てて、あたしは地面に舞い戻った。つまり、尻餅ついた。 「いってぇ、なんだよ!!」   「勝手に転けたのはそっち」  鼻で笑われる。いきなり手を掴んだのはあっち。あたしは悪くない。 「用があるなら口で言えばいいでしょう!耳はついていますから、言えば聞こえます」 「そう。俺には耳がないから、気がつかなかった」  冗談、というか皮肉を言って男は立ち上がった。 「キティだ」  さっきとはうって変わった笑みがなく、だるそうな男。なんとまあ、可愛らしい名前だこと。仮名だな、馬鹿にされている。 「出口は?」 「出口はいいから、名を名乗れ、馬鹿」  ハイ、馬鹿はこっちの台詞ー、言いたいのはあたしー!!
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