8月1日

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▼ 「じゃあまた明日ね、シロウサギ!」 空は茜色に染まり、カナカナとひぐらしが鳴く深山公園。 広場の時計の針は5時を指していた。 入り口で振り返ると、夕陽をバックにシロウサギは微笑んでいた。 もう一度お互いに手を振る。 結局あのままずっとベンチでお話をしていたので、明日は雑木林でセミ取りをする約束をした。 ふふ、楽しみだなぁ。 どこかから聞こえてくる、「よい子は早く帰りましょう」の放送。 アタシはセミ取りを楽しみにしながら、帰り道を早足に歩いていった。 ▼ 深山公園から5分歩いたところに、アタシの住むマンションはある。 階段をペタペタ音を立てながら上がり、3階の305号室…自分の家に入る。 「ただいまぁー」 カレーの匂いがする。 アタシは嬉しくなって、サンダルを脱ぎ捨ててリビングに駆け込む。 壁際のソファーに座って、お父さんがテレビを観ていた。 「ただいま、お父さん!」 「……………」 いつも通り返事はしてくれない。 野球中継を観ながら、アタシなんて居ないかのようにしている。 …もう慣れたけどね。 台所では、包丁で野菜を切る音がトントン響いていた。 お母さんが料理をしているのが分かる。 アタシはその音を聞きながら、お母さんには「ただいま」を言わずに、お姉ちゃんの部屋へ向かう。 お母さんはアタシが話しかけると、うるさいから話さないで、と怒鳴るから。 昔はお父さんもお母さんもあんなじゃなかった。 割と最近…アタシが4年生になってから、少しずつ変わっていった気がする。 『葉』という字が書かれたプレートの下がるドアをノックする。 「あ、舞?入っていいよー」 ドアノブをひねって中に入ると、お姉ちゃんは勉強机の椅子に座ってこっちを見ていた。 アタシよりも長い黒髪を、肩の下までのばしている綺麗なお姉ちゃん。 身長も高くて、モデルさんみたいだ。 「ただいま、お姉ちゃん!」 「お帰り、舞。…何かいいことでもあったの?」
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