372人が本棚に入れています
本棚に追加
お姉ちゃんはこんな風に、アタシが嬉しかったり悲しかったりすると、何があったのか楽しそうに訊いてくれる。
アタシはそれが嬉しくて、その日にあった出来事を説明するのだ。
「そうなの!あのね、あのね、プールの帰りに公園でね…………」
アタシがするシロウサギのお話を、お姉ちゃんは一つ一つ相づちを打ちながら、最後まで聞いてくれた。
「そう、セミ取りの約束をしたんだ…早く明日になるといいわね」
「うん!」
アタシはニッコリ笑って、ノートや難しい本がたくさん広げられている、お姉ちゃんの机を見た。
読めない漢字や英語でいっぱいだ。
「お姉ちゃん、勉強大変?」
アタシの言葉に、お姉ちゃんは笑いながら答える。
「大変よ。お姉ちゃんが進学しようと思ってる学校はすごく頭が良い人じゃなきゃ入学できないの」
「じゃあ何でそんな難しい高校いくの?」
わざわざ大変なところにしなくても、普通の高校にすればいいのに。
「その高校……盟欄学園っていうんだけどね、そこは頭がすごく良い人はお金を払わなくても通わせてもらえるの」
「タダなの?」
「そう。だからお姉ちゃんは頑張って勉強してるのよ」
「お姉ちゃんエラい!」
「うふふ、ありがとう」
さすがアタシのお姉ちゃんだ。
お金がタダの高校にいこうと頑張るなんてスゴい……けど、あれ?
「でもお姉ちゃん、なんでお金がタダの学校にいきたいの?お母さんやお父さんが持ってるのに。」
その瞬間、なぜかお姉ちゃんがビクッと肩を震わせた……気がした。
「お姉ちゃん…?」
「え…そ、それは……。あ、それはね、お父さんたちもお金が必要だからよ。お姉ちゃんのためにたくさんお金を使うと大変だからなの」
「…そうなんだぁ」
なんだろ?
嘘はついてないけど、なにか隠してる気がする。
それにお姉ちゃん、笑ってるけど、少し悲しそうな顔。
最初のコメントを投稿しよう!