8月1日

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「あ、そ、それとね、お姉ちゃんの好きな人がそこを受験するのよ!」 たちまち、アタシの興味は逸れた。 「あ、それってあの写真の人!?」 机の左側に置いてある、小さな写真立てを指差す。 そこには、穏やかな顔つきの男の人が写っていた。 「そう、小沢祐クン。」 お姉ちゃんは少し子供っぽく微笑むと、写真立てを両手に抱えた。 「同じクラスの男の子でね…お姉ちゃんが嫌な先生や生徒に怒られたとき、いつも正しい事を言い返してかばってくれるのよ。そのせいで、よくトラブルに巻き込まれちゃうんだけど。」 楽しそうに話すお姉ちゃんを見てると、なんだかアタシまで嬉しくなってくる。 「それでね、同じ高校に合格できたら、告白しようと思うの。」 「わあ…お姉ちゃんオトナだ!頑張って!」 「ふふ…ありがとね、舞。」 普段は落ち着いていて大人っぽいお姉ちゃんが、本当に子供みたいに楽しそうにだった。 アタシもお姉ちゃんみたいに「恋」をしたら、楽しいかな…? ふと、シロウサギの顔が頭に浮かんだ。 …ってシロウサギは女の子だよ!? アタシ何考えてんだろ。 首をブンブン振って、今の想像を否定した。 「舞…?」 「あ、何でもないから平気平気!じゃ、勉強も恋も頑張ってね!」 怪訝そうな顔をするお姉ちゃんにそう言うと、アタシは部屋を飛び出した。 心臓がドキドキしてるのは、きっと気のせいだ…。
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