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夜の深山公園の広場を、街灯の白い灯りと薄い月明かりが照らす。
人気はなく、噴水から溢れるぱしゃぱしゃという水音が、無機質に聞こえてくる。
端のベンチに座り込んでいるのは二人の人間……否、一人の「光喰らい」と「狩人」だった。二人はしばし月を眺めていたが、ふと、白い髪と紅い瞳を持つ光喰らいが口を開いた。
「以前、人間界に来てから行方不明とされていた最強の狩人が、まさかこの街にいるとは思わなかったなぁ…」
話しかけられた「少女の姿をした老婆」は、幼い少女の声でそれに応える。
「む。実はシティよりもこちらの暮らしが気に入ってしまってな。バイトをしながら暮らしていた、というわけだ」
黒いだぶだぶのワンピースを身につけた老婆は、低い身長といい艶やかな黒髪といい滑らかな肌といい、どう見間違えても七才程度の少女にしか見えない。
「我の曾孫や「髭」の奴がこちらの世界に現れるのも、あと二年ほどだろうな…」
「そしてボクは、彼らに会うことなく、それより先に死ぬことになるんだ…。」
光喰らい、白己卯……いや、シロウサギは、自嘲気味にそう答えた。
「狩人の我が言うのも変だが、貴様は本当に「光」を喰ったことがないのか?」
「うん…。この世界の本来の住人は人間だから…住む世界の違うボクたち光喰らいが、そんな勝手をするのはダメだと思う…」
「だが、光喰らいにとって「光」を摂取しないことは、自らの破滅に繋がるのだろう?」
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