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「な…」
驚愕の声をあげる丑三。
銀色の刃は、自分の白い髪を数本刻むだけに終わった。
更にそれだけではなく、『気づくと』ボクは丑三の懐から脱出し、コートの端まで移動していた。
「貴様…何をした?」
訝しげな表情で丑三は睨むが、もちろん馬鹿正直に教えたりはしない。
まあ驚くのも無理はないだろう。
なんせ、当の本人である自分すら、ここに移動しようと思ったわけではないのだから。
「答えよ!」
背後から嗄れた声。
丑三は再びボクの背後へ回り込み、ナイフを振りかぶっていた。
目前まで迫る銀色の刃。
当然、回避などできるはずもない。
…通常ならば。
人間であれ光喰らいであれ、そんな状況に陥れば、目をつむるなり何なり反射的に何か行動をとろうと『意識する』だろう。
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