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とあるオフィスビルの接客室。
四人の人間が向かい合って座り、商談ができるように配置されたソファー。
テーブルの灰皿からは、煙草の紫煙が立ち上っていた。
室内には三人の男。
ふんぞり返って座る割腹の良い初老の男性と、背筋を正して座る秘書風の男、その正面に、彼らとは対照的に身を縮ませてうつむく中年の男がいた。
「それで…返済の件はどうだね倉岡君?」
初老の男性は、煙草をふかしながら中年の男に尋ねる。
彼、倉岡洋介―――葉と舞の父親は、ビクリと肩を震わせると、しどろもどろになりながらも答える。
「も、申し訳ありません、今しばらくお時間を―――」
ダンっ!
洋介の言葉は、初老の男性が拳でテーブルを叩いた音によって遮られる。
「時間…?倉岡君、キミ二ヶ月前にも同じ事を言ったね?一体我々はいつまで待てば良いのかな?」
「も、申し訳…ありません…」
消え入る声でそう謝罪する洋介の姿に、深いため息をつく初老の男性。
「もうこちらは待てない。返済の目処が立たないのならば、それ相応のモノを、キミには払ってもらう」
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