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「それ…相応…?」
その疑問に、初老の男性の隣にいた秘書風の男が答える。
「我々が所有する子会社の中に、風俗経営店があるのはご存知ですね?」
男の確認に、洋介は頷く。
「率直に言って、あなたの家族…奥様や娘さんの体を売っていただきます」
「なっ………」
洋介は絶句した。
自分の家族を売るなど、言語道断だ。
「もちろん、それに比例した金額をそちらにお支払致します。倉岡様の返済額は三百万程ですので、十二日…約二週間ほどの契約を頂ければ、そちらの返済は帳消し、ということに致しましょう。」
淡々と告げる秘書。
洋介は、頭を金属バットで殴られたような顔をした。
「当然、今すぐに返済が可能ならばよろしいですが、それは不可能なご様子。我々にも都合というものがございます。そちらの予定に合わせる訳にもいかないのですよ」
選択肢はない、そう言っているのだ。
洋介は内心頭を抱えた。
正直なところ、妻はどうなろうが大して気にならない。
事情を知って尚、彼女は喚き散らすだけで何もしない。
この際彼らに売ってしまい、借金を返済した後は離婚でも何でもすればよい。
…だが。
脳裏をよぎるのは二人の娘。
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