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おばあちゃんへ
すっかり認知症が進んで、
あたしのことが分からなくなって、久しいですね。
最近は、
娘の名前も分からなくなって、
一日中、病院のベッドで眠るあなたが、
おじいちゃんに会った時だけは、
恋をする乙女の視線で。
お父さん、でもなく、
おじいさん、でもなく、
名前で呼んで、
頬をツン、と指で差しました。
その、少女のような仕草に、
胸が痛みました。
あなたは、いくつになっても、
おじいちゃんに恋する、
一人の女の子なのですね。
あたしも、歳を重ねて、
いつか、あなたと同じくらいになった時、
そんな風に、いられたらと思っています。
あたしのこと、分からなくても、
あたしが、あなたを覚えてるから。
また、会いに行くよ。
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