Moon iris

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目の前が、暗い 夜ではない、もっと深く、重い…闇 全身を覆い、塞いでいる… 「見て」 アイリスの声に、ハッと我に返る そこには、縦にパックリと、血肉が見える程に裂けたアイリスの腕があった 「!何を」 「よく見て!」 テッドの言葉を遮って、悲鳴のようにアイリスが言う その声に気圧されて、テッドは恐る恐る、傷を覗き込む 「!!」 それに気付いて、テッドは思わず後ずさった 彼女の血肉の奥にあったもの… それは… 「…思いだしたよ、全て」 それに指を絡ませ、引きずり出しながら、アイリスが呟く 彼女の指に絡むもの それは 色とりどりの、電気コードだった その異様な光景に、テッドは恐怖を覚えた 「…ら」 悲しそうな顔をして、彼女が何かを言う 「…、…が、…い…に」 その顔は、無理矢理作った、優しげな笑みだった そして 彼女は 夜の闇へと駆けていき もう二度と 戻らなかった
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