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目が覚めたら、そこは不思議な世界だった。
白い石膏の壁に、蔦のようなものがバランスよく浮き彫りされている。
床は、白い大理石のような素材で、自身がぼんやりと映っていた。
そして、目の前には、大きな階段。
ゆっくりと、近付いてみる。
見上げてみると、この建物の壁に沿って、どこまでも続いている。
不意に、
(来て)
男の、声。
(ここへ)
高すぎず、低すぎず、心地よい。
(来て)
頭の中に、直接響く。
(ここへ、来て)
呼んでいる。
この先で。
根拠はないが、確信はあった。
階段の前に立ち、一度だけ目を閉じる
(ここへ、来て)
闇に流れる声が、優しく導く。
強く、惹かれる。
だから
「行くよ。」
呟いて
目を開けて
床を
蹴った。
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