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『Iは私、ワタシはアイ。人を捉えるのはeyeで、ヒトを成長させるのは愛。Iには無限の可能性があって、ムゲンの種類の愛がある。
自己愛。
他者愛。
友愛。
愛憎。
億千万対のeyeが世界を観測し、世界は初めて定義される。個人の「I」dentityが存在し、世界はそれに左右されている。』
澄み渡る空気の中、寒空の下のある自然の中で、ある一つの「I」を語る存在がいる。
語るはひとり、聞き手もひとり。聞き手が言葉を発する様子はない。なぜならばそれは独白だったから。もし言葉を発してしまえば、その存在を定義する独白を聞く資格が消え去ってしまいそうだったから――――
冷めた呼気を吐きながらも、自己を語る言葉を紡ぐ。
『でも、私のIは他とはいささか定義が違う。個人のIから引き出されたIでありながら、万人のために現界するIでもありえる。始めからこういう形ではなかったのに、気づいたらこんなカタチになっていたんだ。全くもって不自然なこともあったものさ。』
彼の存在が初めて聞き手に話をふった。
「……僕に意見を求めるの?……僕にはあんまり論理的な話は得意じゃないけれど。でもね、君のあり方はすごく綺麗だと、素直に思うんだ。」
聞き手は、自分のこころからの感想を口にする。
「それと。一ついいかな?君の言う、君のモノであり、万人のために現界?する『I』って、一体なんなのかな?」
聞き手は唯一違和感のあった、己の疑問点を問う。
それに対して語り手はその問いを待っていたと、言わんばかりに。満面の笑顔で答えを紡いだ。
『―私のIは「I」nfinite。遙かに遠大な無限に至ったIを所有するもの』
―これは、ひとつのムゲンのハジマリ。
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