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その足に、黒猫が頭を擦り付けて、存在を見上げて、
―待っていた、と言わんばかりに。一声鳴いて、そしてその姿を消した。
存在はそのことを知覚できていない。視覚も聴覚も触覚も正常には機能していない。ハズなのに。
『オマエはこの光景が許せるか』
そんなことを、語りかけられた。
(あなたは、ダレですか。どうして声が―)
『今オマエに聞いているのはひとつ。オマエは、この光景が許せるか。』
許せるはずはない。この理不尽な光景を作った要因が憎い。
『ならばもうひとつ問おう。オマエは人の弱さ全てを感じる覚悟はあるか。』
…多分感じられる。ここより辛くても、もうこの風景を見てしまったら。
『いいだろう。ならば自己を一時的に終了しろ。ならばオマエは終焉戯曲の役を手に入れる。』
いいさ。全てを受けてあげよう。
『自己を飲み込み、他人の重さを受けとめろ。救えぬ人々を直視して、その結末を飲み込め。その思い一つ一つに終演をもたらせ。さすれば貴様は―終焉戯曲。エンドロールの座を掴み取る』
「いいぜ。俺は敵を倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して」
その存在は人と、人と呼ばれる事をやめて。
「―エンドロールとやらに、なってやろう―」
―これはひとつの、オワリとハジマリ―
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