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鬼殺し村は、都会から離れた小さな村で、下民村と対になった村だった。
不思議な事に、ここに訪れた人々は、必ずと言って良いほど行方不明になると言う。
その事に疑問を持った拓哉の父は、母と二人でその調査に向かった。
そして、その伝説通り……二人は行方不明になった。
国としてもこの神隠しという現象を見過ごせず、この村に近づく事を禁止にするなどの対処をとるも、まるで何かに吸い寄せられるように、国の住民達の一部はその村に向かって行った。
行った者達が帰って来ない為、詳細は全く分からず、人々はそれを恐れた。
「ここが鬼殺し村……。」
拓哉は鬼殺し村を歩いた。
辺りはヤケに静かで、人の気配は全くしない。
薄気味悪い静けさの中を進んで行くと、その先には多数の墓が作られていた。
「墓…………?」
その場所には、隙間なく墓があって、数万はあるだろう程の数だった。
「何でこんなに墓が……。」
「あなた運が良いわね。」
「え……?」
「その運がある内に……祭りが始まるまでにこの村を出た方が良いわ。」
「どういう事だよ…?」
「この村はね……イカれてるの。」
そう言うと少女は、墓に花を手向けて手を重ねた。
そして、そっと目を閉じて何かブツブツ言い始めた。
「………。」
拓哉にはその少女が泣いているのが見えた。
きっと大切な人の墓なんだ。
可哀想に……。
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