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大沢は死んでしまいたい気持ちになった。
みんながオレを見ている。オレを見て笑っている
早く立ち上がるんだ。この場から逃げなければ
大沢は転んだ拍子に落としてしまった鞄に手を伸ばす。誰かに踏みつけられたらしく靴あとが付いていた。
大沢は鞄を手にとり、歯ぎしりをしながら嗚咽をもらす。
「失敗したなあ」
涙声で自分自身に吐き捨てるように声を出した。
「大丈夫?」
自分の頭の上で声がする。女の声だ。さっき自分を押し退けた女が戻ってきたのだろうか。気まずいものがある。知り合いだったら、もっと気まずい。
大沢は恐る恐る顔を上げた。
そこには、自分を押し退けた女では無く、ましてや知り合いの女でもなかった。
どこかの高校の制服を着た少女が立っている。その少女は射ぬくような視線を大沢に向けホームにしゃがみこみ、大沢と目線の高さを同じにした。
その強い光を宿した真っ直ぐな瞳には見覚えがあった。一週間前、国立のスーパーマーケットの事務所で見た万引き犯の少女である。
秋元美香がそこにいた。
大沢は顔面から血の気が引いていくのを感じていた。あまりに唐突な事なので完全に足がすくみなかなか立てないでいた。
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