営業の男 3⃣

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「ほら、ちゃんと立ちなさいよ」 美香は大沢の腕を掴み引っ張り上げながら、立つように促した。 そして立たせると、ホームに据え付けてあるベンチに強引に座らせた。 大沢は美香のなすがままになりながら、どうしてこの少女が自分の目の前にいるのだろうとずっと考えていた。 「ちょっと、ズボンの膝破けてんじゃん。あんた怪我したんじゃないの?」 つまずきホームに膝をついたときに破れたようだ。気持ちが落ち着いてくると、膝頭がじんわりと痛くなってくる。 「失敗したなあ」 大沢は目の前に美香が居るのも忘れて思わず言葉を漏らしてしまう。 「何言ってんの?あんた転んだだけじゃないの」 大沢はどきりとして顔を上げる。美香が腕くみをして立っている。 結構可愛い顔してるよな 大沢は松本の言葉を反芻した。自分の目の前に立つ美香は美しい少女だった。 肌の色はどこまでも白く、普通ならコンプレックスに感じてしまう程の広い額を、前髪で隠す事などせず臆することなく出して見せる。 細くとがってはいるがほんのり上向きの鼻梁が、厚めの唇と丁度良いバランスを保っている。そして美しく均整のとれた縦長の瞳が、全ての者を萎縮させてしまう程の光を放つ。 それでも威圧的な雰囲気を感じさせないのは、柔らかな曲線を描く眉のせいだろう。 細く華奢な印象を与える顎が、実像よりも顔を小さく見せる。黒く艶やかな髪が肩までかかり、美香が大きく息をする度にふわりと揺れた。
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