営業の男 3⃣

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「はい。今新宿です。やっとの事で電車降りたんですよ。」 大沢は喋る程に息苦しくなりその場に座り込んだ。 「お前アレか?大丈夫か?一人で帰れるのか?」 林も受話器の向こうの大沢がいつもの大沢ではないことを察知して心配そうな声を出す。 「大丈夫です。ここからなら、電車で一本ですから」 「そうか。ならアレか。大丈夫か。気ぃ付けて帰れよ。」 「はい。どうもすみません。明日は必ず行きますんで」 大沢は携帯電話を握り締め座り込んだまま、壁に背中を寄りかからせ右往左往する人の波を見つめていた。 朝のラッシュ時もそろそろ終わりに近付こうとしていたが、相変わらず新宿駅構内は人で溢れかえっている。 その人波に自分も紛れていたいと思ったが今の自分には無理な気がした。今の自分は大勢の中の一人では無いような気がする。 目の前を往く人々がみんな自分に一瞥をくれて立ち去って行く。 大沢は考えた。しかし何も頭に浮かんでは来なかった。携帯電話が手の平から滑り落ちる。 「失敗したのか……オレは」 大沢は呟いた。
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