出会いは風

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ガラスに体重を掛けるようにして待伏せていたのは、南も良く知る顔だった。 立ち止まり深く礼をすると、男は、預けていた体重を地に戻すとこちらをむいた。 「よくないことを考えているようだな。南」 どこまでも人を従わせてしまうような声は、あのずぼらで自己満な女帝にはないものだ。だが、怯むことも南のプライドが許さなかった。 「いいえ、副社長からすこしお小言をいただいただけです。私が、書類をミスしましたので」 あながち間違ってはいない。だが事実でもない。 「まぁ、いいがな。では、叔母に伝えてくれ、あんたが企むことはこちらは掌握済みだと」 「承りました」 踵を返す男を深い礼で見送る。 そこには、薄暗くなった廊下だけ残った。
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