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「一真のいうとうり婚姻は強制じゃない。しかし、私たちとしては望むことだ。藤森は、特殊な吸血鬼だ。子を成し、一族を形成し生きてきた。光を嫌う吸血鬼とは違い、普通の人間のように暮らせる。しかし、血は必要で定期的な摂取がいる。言ってみればそれだけの差だ。」
銀は、穏やかにいった。
華という人間だけが子をなせるというなら、もしかして……。
「あのう、弥生さんは、もしかして、華ですか?」
茜は遠慮気に聞いた。弥生は、五十近くにはとうてい見えない若さで、それで居て人間離れして美しい。
そんな弥生は、首を横に振った。
「今はちがうわ。」
じゃあどうしてと聞こうして、それ以上聞いてはいけない気もして辞めた。
「私を守ってくれるんですか?」
そう呟いたのは、無意識だった。
「俺たちのエゴでよければ、全力で守ってやるよ。茜がいやだっていうなら姿を見せず守る。それで同士が守れるんだ。もちろん、茜も。」
なぜだが、初めて聞いた時からこの男の声は妙に安心感を覚える。だから、従ってみようと思った。
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