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その日は藤森邸に泊まることとなったのだが、用意された部屋は茜の予想範囲を逸脱していた。
天蓋のついたベッドに、見渡す限りのレース。色は、コーラルピンクで統一されて、一番驚いたのは、原寸大かと思われるほどの、熊の人形だ。
いわゆるテディベア。
「ここを使ってくださいね」
「ありがとうございます」
そう言って案内してくれた雪はなかなか出ていこうとしない。不思議そうな顔で見ていたら、いきなり雪は笑った。
「すこし、お話しません?」
雪の提案を受けたのは、今がまだ九時と言う時間でもあり、この部屋で一人はいささか恥ずかしいと考えたからだ。もちろん、雪自身にも興味はあった。吸血鬼と名乗る一族の娘。興味がわかないほうがどうかしていると思う。
茜は雪に促されるまま、ふかふかのコーラルピンクのソファーに腰掛けた。
「一にい、いい男でしょ?」
妹が、身内を恥じるでもなく自慢するのは珍しいのではないだろうか。
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