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「それは……、」
それは……できない。できないのだ。
「できない?」
敢えて何故と聞かないのは雪の優しさかもしれない。
うつむいたまま、答えない茜にごめんなさいと小さい声で謝る。
「私たち、吸血鬼って呼ばれるの好きじゃないの。茜さんなら、分け隔てなく一真にいを好きになってくれそうで。」
期待させ、それを裏切るのは簡単だ。きっと今までたくさん裏切られたことがあったのだろう。
人間は違いを嫌う生き物だから。茜だって、そういう生き物だ。
人間が一番汚い。そして人間が一番美しい。誰かが教えてくれた言葉だ。
だから、目の前にいる純粋すぎる生き物は悲しそうに肩を落とすのだろう。
「聞いていい?」
「いいよ。」
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