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本来は三流貴族の末息子、そこらの貴族のお嬢さんと適当に結婚して、三流貴族のまま死んでいく。
そんなはずだった。
心地よい風とともに朝日が部屋を輝かせ、朝の匂いにうめ尽くされる。
ベッドの上で伸びをする「ん…。」思わず声が漏れる。思い切り息を吸い、肺が朝の匂いで満たされる。
「朝か…。」なんとなく言ってみただけの言葉が宙にひびく。ベッドから降り、キッチンへと進む。
「おはようございますにや」赤毛のネコがそこにいた。「ん?おはよう。」挨拶は基本だ、台所に立ち顔を洗ったりする、鏡に映った自分は随分とやせこけて滑稽に思えた。
「朝ごはんはどうするにや?」「まかせる」
キッチン中央の椅子に座る、しばらくしてネコが料理を運んでくる。
サシミウオの塩焼きと特産キノコ味噌汁、それに白米。「東洋風…だな、コジロー。」赤毛のネコは自慢気に「そりゃあそうにや、ワニャは東洋で産まれたからにや!」「ふーん、この前は王室産まれっていってなかったっけ?」塩焼きがしょっぱい「そ、そんなこといったかにや?き、気のせいぢゃないかにや?」赤毛のネコは尻尾で頭をかいた、味噌汁がずいぶんと薄いしかし、そんなことなど二の次だ!今日の食卓にはアレがない!アレがないとどんなに美味いものも生ゴミと同じにすら感じるのだ。わなわなと震えネコにきく「コジロー…なにか足りないと思わないか?」「にや?あぁ、アレのことにや?外で冷やしてあるにや。もってくるかにや?」「あぁ、いますぐ頼むよ」
あぁ、アレが今日もある…こんなに幸せなことはあまりないだろう…。
間
食卓にはあんにんどーふ。そう!アレとはあんにんどーふのことである!
誉れ高き香り、その名に恥じぬ存在感。
このあんにんは、ただのデザートだ、しかし、デザートであってデザートにあらず。
決して油断してはならない。
少しちいさめに深呼吸をする。そして…。
刮目!
右手にもつスプーンに緊張が走る!
(イツだっ!イツ攻めればいい!?)
デンバーの脳が電気を巡らせ、思考にいたる、その時、そよ風があんにんを揺らす!
(いまだっ!)
もう迷いはなかった…。あるのは、眼前にあるあんにんどーふ、それと覚悟、あんにんを食すという覚悟だ。
「うおおおお!!!」
いま、あんにんどーふとの戦いが始まった!
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