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デンバーの体がどうにか動けるようになるまで2年と8ヶ月もの時を要した。
2年半以上の寝たきり生活で筋力は衰え、狩人としての感覚は完全に失われつつあった。
しかし、あの黒い悪魔との恐怖はこびりついたままだった。
動けるようになったデンバーは、お世話になった工房の手伝いをし、どうにか行く当てのない自分の場所を維持するのに必死だった。
いつものように工房の開店準備をしていたデンバーに、ライアがとある提案をした。
「なぁ、私と一緒に狩りにいかないか?」
「へ?おれが?」
「お前と私しか、今この場にはいないわけだが?」
「いや…でも、装備とか…は?」
「おもしろいことをいうなぁ、ここは工房なのだよ」
「う…」
正直、もう狩りには行きたくなかった。狩人としての腕が鈍ったこと、怪我が回復しきっていないこと、と表面的な理由はあるが、なにより怖いのだ。たまらなく。
恐怖…言葉ではあっさりといえてしまえるが、2度の悪夢は俺の精神を深くえぐり、もはや修復不可能なところまできていると思う。
じつは、動けるようになってすぐに、工房の武器を持ってみようと試みたもののリアルなフラッシュバックのおかげで手は震えだし、とたんに足に力が入らなくなってしまってその場に座りこんでしまうまで、心が折れていた。
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